2. 2自由度振動系のシミュレーション
公開日: 2014/11/16 基礎編
図2.1 2自由度振動系モデル |
図2.1のようなモデルを、2自由度振動系と呼ぶ。ここでの2自由度とは、質点がm 1 とm 2 のふたつであり、それぞれが上下方向のみの運動を行うことを示している。
図2.1のモデルはクォータモデルとも呼ばれ、車両の上下方向の運動を扱う際に、使われることが多いようだ。
ここでは便宜上、質点m 2 をばね上、質点m 1 をばね下、z を路面と呼ぶことにする。
1自由度振動系のシミュレーションと同じように、路面z から上下方向の強制加振を行い、ばね上とばね下の周波数応答を、scilabとxcosを用いてシミュレーションをする。
また、シミュレーション結果の妥当性を、ボード線図の結果と比較して検証をしたいと思う。
xcosでシミュレーションする
図2.1のモデルは、運動方程式(2.1)で表すことができる(1)。
各パラメータは表2.1とする。
式(2.1)はブロック線図として、xcosで図2.2のように作成し、シミュレーションを行うことができる。入力は、ブロック線図の左にあるRead from input fileブロックから、路面z の上下変位値を、1ms 刻みで行う。
ここでも、1自由度振動系のシミュレーションと同じように、±0.024mの振幅の正弦波を、0.1Hzから20Hzに徐々に周波数を変化させたデータを用いる。
図2.2 xcosブロック線図 |
シミュレーションの結果として、ばね下x 1 とばね上x 2 の時系列応答を、ブロック図のoutput 1から出力できる。出力結果を図2.3にしめす。
この出力グラフは、ばね上が300kg (車重でだいたい1200kg)、ばねレート3.1kgf/mmの走行中の車両の運動を表している。
図2.3 強制加振によるばね上 とばね下の応答 |
ばね上とばね下が、それぞれ1.46Hzと11.27Hzで固有値を持つことがグラフからわかる。また、固有値の振幅のピークは、グラフから0.039m、0.027mと読み取れるので、ばね上のゲインを G 2 、ばね下のゲインを G 1 とすると、
G 2 = 0.039m / 0.024m = 1.63
G 1 = 0.027m / 0.024m = 1.13
となる。
ただし、ここでブロック線図のoutput 2の出力、図2.4を確認してみる。
図2.4 接地荷重の変化 |
図2.4は、ばね下と路面の間に働く力で、タイヤの接地荷重の変化を表している。
グラフから5.45Hz以降は、接地荷重がばね上とばね下の重量の合計の、3234Nよりも減少していることがわかる。つまり、実際の車両では、タイヤが路面から浮いている。
したがって、5.45Hz以降の計算結果は、残念ながらかなりあやしいということになる。あくまで運動方程式に沿って、計算した結果として進める。
車両の運動を動画で確認する
xcosシミュレーションの結果から動画を作成し、車両の動きを確認してみる。
クォータモデルのシミュレーションなので、4輪のパラメータは全く同じということにしている。
アニメーションでみると、ばね上とばね下が固有値を持つ様子がわかると思う。
モデルはSketchUpのフリー素材を利用し、フリーウェアのBlenderでレンダリングした。
ボード線図からも計算してみる
1自由度振動系のシミュレーションと同様に、伝達関数からボード線図を求め、上記のシミュレーションの結果の妥当性を確認してみる。
ボード線図を求めるには、まず運動方程式(2.1)をラプラス変換して、伝達関数(2.2)と(2.3)を求める(1)。
伝達関数をscilabに入力すると、図2.5のボード線図を出力することができる。
scilabへの入力コマンドは、図2.6とする(2)。
図2.5 ボード線図出力結果 |
図2.6 scicos入力コマンド |
図2.5から読み取れるばね上とばね下のゲインのピーク値は、それぞれ4.23dBと1.15dBである。
ボード線図のゲインは、対数値を20倍した値なので(3)、式(2.4)で元に戻してあげると
となる。
結果をまとめてみる
xcosシミュレーションとボード線図から、得られた結果を表2.2にまとめる。
それぞれのピーク値の、ゲインと周波数の誤差は、以下のとおりである。
やはり1自由度のときと同じく、微妙にずれているが...
まあぼちぼちの値ということにしてしまおう。
タイヤが宙に浮いているのは、路面z の上下動が激しすぎたせいなので、この点については、要改善である。
◆参考文献
(1)自動車のサスペンション、カヤバ工業、pp. 107
(2)橋本洋志、石井千春、小林裕之、大山恭弘共著、Scilabで学ぶシステム制御の基礎、オーム社
(3)Wikipedia、フリー百科事典、ボード線図
◆使用アプリケーション
simulation: scilab 5.3.3
model: sketchup 2014 (vehicle model: mandun)
export obj (plugin): obj_in-out (Akitenh)
render: blender 2.57
csv import: phyton 2.7.7, csv f-curve importer v7.0 alpha1